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浴衣ウオッチの思い出

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文:富澤輝実子

隅田川花火大会

今年は新型コロナの影響で花火大会や大規模な盆踊りイベントなどが中止になり、静かな夏となりました。例年でしたらこの時期は「今年の浴衣の流行は?」と、金曜、土曜の夕方や日曜日には町を行き交う若者の浴衣姿をウオッチしていました。なかでも7月最終土曜日に行われる東京最大のイベント「隅田川花火大会」の日は年に一度のエキサイティングな日でした。
7月最終週の土曜日はいつものように茶の湯のお稽古を終えてから地下鉄銀座線・上野駅の浅草行きホームのベンチに陣取るのでした。茶の湯の稽古は「冷水点(れいすいだて)」で千鳥茶巾(ちどりちゃきん)を用いる夏ならではのもの。冷たくておいしいお抹茶をいただき、爽やかな気分で上野駅に向かうのでした。

「浴衣ウオッチ」最大のチャンス

花火大会当日夕方の銀座線上野駅のホームは身動きできないほどの混雑ぶりです。ほぼ2、3分おきに電車が入ってくるのですが、どの電車も浴衣の男女ではち切れそうなほど満員です。もう窓ガラスに押し付けられて顔がひしゃげている人もいるくらい。電車が止まると降りたい人を通してあげるために、中にいる大勢の人がドアからいったんどどっと外に出てきます。この時が「浴衣ウオッチ」最大のチャンスです。
大人気だった浜崎あゆみさんのように膝までの短い浴衣、首にジャラジャラと飾りを巻いている人、レースの足袋を履いている人など様々です。もちろん正統派の伝統の藍染江戸浴衣やカラフルな注染浴衣、有松絞りの贅沢な浴衣、デザイナーズブランドの浴衣の方も大勢いらっしゃいます。
降りる人が済むとこんどはホームで待っている人がいっせいに、どやどやっと電車に乗り込みます。まるで吸い込まれるように入っていきます。乗り込めない人はドア付近でギュウギュウと押し込んで、本当にはち切れそうに込み合ったまま浅草行きの電車は出発するのでした。これが5時くらいから6時半くらいまでどの電車も同様の光景でした。

ほほえましいエピソード

いつもほほえましく思っていたのは、カップルで行き交う方たちはたいてい男子も浴衣を着ていたこと。「ギター侍」の波田陽区さんみたいな格好なのですが、それがかえって初々しくていい感じなのでした。すると、帯の解けたお嬢さんが急ぎ足で一目散にこちらに向かってきます。解けた帯の端を持った男子がすぐ後ろをついてきます。どうしたのかしらと見ていると、「あの、帯がほどけちゃったんです。結んでいただけますか?」と、すがるように頼んできます。可愛いですね~。私が着物を着ていて年配なので頼ってくれたのですね。もう、「任せてちょうだい、お手の物よ」とばかりにすぐに結び直してあげて、「花火を見ているときにまたほどけたら、応急処置はリボン結びでいいのよ」などと言いながらサヨナラしていました。すると若い男女は人込みで見えなくなるまで後ろを振り返りながらお辞儀をしていました。
それからも何べんも解けているお嬢さんの帯を結び直してあげましたが、そのうち気づいたことがあります。解けている帯はみんな合繊の帯でした。正絹の博多帯はほどけないことをここで知りました。それまで、私は合繊の帯を締めたことがなかったので知らなかったのです。
その後、東日本大震災で中止、復活した年は途中暴風雨と雷で中止など様々ありました。1年延期されましたが、今年はオリンピック・パラリンピックと時期が重なるため予定がありませんでした。新型コロナを乗り越えて来年はオリパラが無事に開催されることを願いますし、再来年には隅田川の花火大会が開かれることを期待しています。
※地下鉄銀座線・上野駅のホームはきれいにリニューアルされて、和風モダンな素敵な感じになりましたが、柱が太くなって数も増えたため(贅沢言って申し訳ないのですけれど)浴衣ウオッチには不都合になりました。ベンチに座っていると見えにくくなったのです。一昨年は仕様がないので立ってウオッチしていたのですが、寄る年波でへとへとになり、昨年はお休みしてしまいました。
※どうして上野駅でウオッチして、浅草に行かないのか不思議に思われるでしょうか? それは、浅草まで行くとあまりの混みようで、ちびの私は踏みつぶされると心配なのですね。行ったが最後、帰ってこられなくなるといけませんものね。

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