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結城紬の不思議を解決しましょう

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文:富澤輝実子

私達着物愛好家の大好きな着物の両横綱は「結城紬と大島紬」だと思います。
今日はその中からQ&Aの形で結城紬のお話しをいたします。

結城紬の産地はどこですか?

結城紬は茨城県の結城市周辺と隣接する栃木県小山(おやま)市で作られています。それは、どちらも昔々、同じ藩主の治めていた城下だったのです。結城も小山も江戸時代結城藩の中心地でした。また、藩主・結城氏は鎌倉幕府開府前の名は小山氏でしたから同じ氏族です。茨城県と栃木県両県で製造されたものはどちらも結城市で厳格なる検査を受けて出荷されます。

結城紬と本場結城紬という名前を聞きますが、違いは何ですか?

私たち着物愛好家は結城紬というときは「伝統の製法による貴重な地機織りの結城紬」を思い描きながら話しますし、譲り受けた結城紬を着るときもことさらに「本場結城紬」の名称を意識していないかもしれませんね。ですが、厳密には大きな違いがあります。「本場」と付かない結城紬は一般名詞ですから何にでも付けられる名詞です。織物だけでなく焼酎とかうどんとかチョコレートなど食品にも付けられますし、もちろん人の名前にも付けられます。つむぎちゃん、あずきちゃんなどという愛らしい名前のお子さんがいますでしょ? 少し前ですが、織物の名前の付いた人気のチョコレートがありました。別にその織物が練りこまれているわけではないのに特段おかしいとも感じませんでした。きれいな名前のチョコレートだと思ったくらいです。
ところが、「本場」と名前の付いた「本場結城紬」は厳しい条件のもとに製造される特別な織物です。ですから結城紬と本場結城紬はまったく別の織物ということができます。本場結城紬は原材料から絣作り、染め、織り、仕上げにいたるまで細かな条件と厳しい品質検査が行われ、それに合格した織物が「本場結城紬」として市場に流通するようになっています。本場結城紬ならではの特別な制作工程がありますので、写真を付けておきます。この写真を見ると高度な技の職人さんが日々っ手掛ける、緻密な制作工程から生み出された織物に尊さと愛着を強く感じることと思います。
①1反分の繭

②1反分のつむぎ糸

③真綿掛け(真綿作り)

④手つむぎ糸取り

⑤オボケの中の手つむぎ糸

⑥絣くくり

⑦糸染め(たたき染)

⑧地機織り

本場結城紬の証紙の見方を教えてください

本場結城紬には添付のような証紙が付いています。上から順に「地機平織り」「地機縮(ちぢみ)織り」「高機平織り」「高機縮(ちぢみ)織り」の4種です。右端の上から2列の緑色の証紙に「本場結城紬 地機」「本場結城縮 地機」とあり下2列の右端は茶色の証紙で「本場結城紬 高機」「本場結城縮 高機」とあります。高機で本場と付くのは「無地」か「縞」あるいは「格子」に限られます。絣柄の高機織りには「本場」の証紙は付きません。

本場結城紬の価値はどこにありますか?

本場結城紬は、以前の文化財結城紬も含めて吟味された真綿から手作業で丁寧に紡ぎ出された糸を用い、絣を作り、染めを施し、地機に掛けて織り上げます。一部、無地と縞・格子は高機が許されています。貴重な古法を守り続けて最上級の品質を維持しています。よく「結城は新しいうちは寝間着にして体になじんだら外出に着るといい」と言われていますが、それは昔のことです。戦前の男物の結城はゴワゴワとしていたため、そのように言われたのですが、現在の女物はまったく地風が異なります。糸は細く地風はしなやかで、着心地は繊細です。ですが、糸は上質ですから自分一代ではなく子や孫の世代まで譲り渡すことができます。およそ100年もつ着物の代表と言えますから、購入時に思い切って頑張ったとしても100で割れば一年の単価は可愛い数字です。上質なものを選んだほうが賢い選択になるでしょう。
もうひとつ、私も戦前の結城縮を今でも着ています。80年以上前の品物です。大切なものですからやはり丁寧に扱っています。

結城には紬と縮(ちぢみ)があるのですか?

本場結城紬には縮織りがあります。江戸時代から明治にかけてはほとんど男物の無地や縞が織られていたのですが、明治の文明開化から男の方はいち早く洋装に変わりました。結城だけでなく織物産地はどこも男物中心に作っていましたから、皆一様に困りました。そこで、まだまだ和装を続けていた女の方向けに織物をシフトしていったのです。明治から大正は御召全盛のころですから「御召地風の紬」をこしらえたのです。それが緯糸に八丁撚糸機で撚りをかけた「縮織りの本場結城縮」だったのです。大好評で明治・大正から昭和の戦後30年頃までは結城と言えば縮織りのことで、平織りの紬はほとんど織られていなかったのです。
ところが昭和31年、ほとんど織られていなかった平織りの結城紬の製造技法が国の重要無形文化財に指定されたことから平織りの紬のほうに注目が集まりました。そして現在では平織りの紬が主流となって縮織りは少数となっています。どちらも子法を守って丁寧に作られる貴重な織物です。この技法が日本国のみならずユネスコの「世界無形文化遺産」に登録されて10年がたちます。今年は記念の年となりました。

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