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絹のみち【世界一の蚕の原種保有国】

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文:富澤輝実子

マツコさんの人気テレビ番組で「シルク」を取り上げた回があり、日本が持っている蚕の原種についても触れていたと聞きまして、見逃したことを残念に思いましたので、今回は「日本が持ち続ける貴重な蚕種とその保存方法」についてお話しいたします。

蚕に品種があることをご存じない方のほうが多いと思います。私も『美しいキモノ』で「日本の絹」の取材をするまでは知りませんでした。

「日本は世界一の蚕の原種保有国」

日本は蚕のジーンバンクがあり、「種の保存」が営々と大切に続けられています。ある時取材で伺った「農業生物資源研究所 北杜地区」というところがあります。山梨県北杜市小淵沢町にある蚕種の保存・研究施設です。

ここでは、江戸末期から日本で飼われた品種をはじめ、明治から大正、昭和の戦前にかけて世界一の生糸産出・輸出国となった時代を中心に育成された在来品種、改良品種、突然変異種など、およそ500種を保存しています。

 

蚕を専門に育てている「稚蚕飼育所」と蚕の三齢まで

種の保存が図られ赤ちゃん蚕を専門に育てている「稚蚕飼育所」があります。それは蚕が卵からかえったばかりの赤ちゃんを、養蚕農家が育てやすくなる三齢(さんれい・赤ちゃんから2回脱皮した子供の蚕)まで飼育しているところです。

毎年、冬眠に入った全種類の卵を1月までは蔵の中で自然保管して、2月からは冷蔵保管、飼育の時期に合わせて冷蔵庫から出します。
卵は10日ほどで孵化し「*毛蚕(けご)」と呼ぶ赤ちゃん蚕になり、この時から蚕は桑を食べ始めます。
ここから2回脱皮して3齢までは全頭(蚕は匹ではなく、1頭、2頭と数えます)を飼い、4齢からは各種130頭ずつ飼育します。熟蚕になると繭を作ってサナギとなり、蚕蛾となって繭から出てから、おおむね7月に産卵すると卵は冬眠します。

この作業を毎年繰り返し、種の保存が図られているのです。そして新品種を開発・育成する必要な時が来ると、各研究機関に原種を提供しています。

*なぜ毛蚕と呼ぶかはその姿を見るとすぐ分かります。赤ちゃん蚕は蟻のように小さな体中、黒い毛におおわれているからです。そんなに小さいのにムクムクと動き回って(たぶん餌を探しているのでしょう)愛らしいというかけなげというか、見ていて引き込まれます。

日本の在来品種

皆様よくご存じの有名な日本の在来品種の「小石丸」をはじめ、「又昔(またむかし)」「赤熟」「青熟」「世界一」「種ケ島」などがあります。白い繭が印象的ですが白色ばかりでなく、「大如来(大如来)「琉球多蚕繭(りゅうきゅうたさんけん)」などの黄色い繭もあるのです。

 

海外の蚕品種

また、海外の蚕品種もご紹介します。

 

 

先の蚕の原種・在来種を取材した内容は『美しいキモノ』2011年冬号(通巻238号)230ページから掲載されました。詳しくお知りになりたい方は是非、お手元でご覧いただけると嬉しいです。

長野県上田市にある「上田蚕種」

毛蚕の取材で伺った長野県上田市にある「上田蚕種」は大正5年設立の蚕種製造会社で、社屋は大正モダンな木造二階建ての建物です。窓枠には三角破風(ペジメント)がつき、正面玄関上には蚕をシンボル化した意匠が付けられています。外観は洋風なのですが内部は純和風でレトロな趣のため、映画のシーンにも登場しているようです。
私たちの取材中の様子は日本テレビで現在も続く、所ジョージさん司会の「一億人の大質問 笑ってコラえて」のクルーが密着同行し、「雑誌の旅」で放送されました。2010年の8月のことです。

「カネボウ」はかつて「鐘ヶ淵紡績」という巨大な製糸・紡績会社

各地の養蚕農家には「春嶺鐘月(しゅんれいしょうげつ)」「錦秋鐘和(きんしゅうしょうわ)」という名前の蚕がいます。とても美しい名前で、どちらにも「鐘」という字が入っていますが、その由来を尋ねると「鐘紡(かねぼう)が開発した蚕種だから」ということでした。

今は化粧品でなじみ深いカネボウですが、往時は日本を代表する製糸・紡績会社だったのです。昨年の春、このHP上で「絹の未来」をテーマにお話しした回でがあります。その中の長野県の岡谷蚕糸博物館・林学芸員のご研究からの引用です。

大製糸会社だった鐘紡はフランスとアメリカへの輸出を念頭に昭和11年、高級絹石鹸〚サボン・ド・ソワ〛(サボンはシャボンで石鹸のこと、ソワはフランス語でシルクのことです。念のため)を製造し、石鹸は一つずつきらめく絹のハンカチで包み、まばゆく光る銀色のケースに納めて販売した」ことを記しています。このアイディアは日本のファッション・デザイナーの草分け・田中千代女史のアドバイスによるものだそうです。価格はというと、ひと箱3個入りで6円だったそうです。現在と貨幣価値が異なりますので、この数字だけ聞いてもピンときませんが、お米10㎏が2円50銭の時代と聞くと、その高額なことが分かります。そして、フランスやアメリカの女性が化粧品ばかりか石鹸にも、上質であれば高額な対価を惜しまないことを知った〉

というエピソードを紹介しています。「カネボウ」はかつて「鐘ヶ淵紡績」という巨大な製糸・紡績会社だったのです。

▢絹のみち【郡是製絲】
https://www.warakuan.jp/blog/chiebukuro/3168.html

▢横浜シルク物語
https://www.warakuan.jp/blog/chiebukuro/2753.html

▢絹の未来
https://www.warakuan.jp/blog/chiebukuro/2728.html

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