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先生や女学生が袴をはき始めたのは何故?

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文:富澤輝実子

現在の卒業式で見られる先生や女学生の袴姿はすがすがしく、いくぶん憧れをもって眺める方もおありと思います。ですが意外なことに江戸時代、基本的に女子は袴禁止でした。では、なぜ明治の女学生は揃って袴を着用したのでしょうか? 今回は女学生と袴について学びましょう。

明治の女学生の始まり

江戸時代までの女子教育は主に家庭教育ですから女学生というのはなかったのです。でも諸外国とは少し違って識字率は高く文字の読み書きは多くの女子ができたのです。幕末に「ペリー来航」を機に日本は横浜に港をひらき開国しました。そして欧米の文化が怒涛のように押し寄せることになったのです。そのひとつが「女子教育」と言えるでしょう。日本で最初にできた女学校は横浜の「フェリス女学院」で、明治3年のことです。ですがこちらはキリスト教の布教活動の一環としてのものですから、必ずしも日本女性として必要な教養が満たされる内容だったわけではなかったようです。

日本人女性のための女子教育のはじまり

海外の方が見た日本人女性というと(イメージかもしれませんが)、しとやかで慈しみ深く、思いやりがあって控えめなのに芯が強い、というところではないでしょうか? 現在は異なる状況ですか? 日本女性らしい教養を身に着ける女子教育の始まりは、「お茶の水」からでした。

官立女学校の袴は男子と同じ木綿の男袴

官立(国立)初の女学校・東京女学校(お茶の水女子大学付属中学・高等学校の前身)ができたのは明治6年、ここでは寺子屋のように座卓の前に正座して学ぶのではなく椅子に腰かけて授業を受けることが多くなり、さらに運動(体操)の時間もありましたから、着物姿では前がはだけてまことに不便だったと思われます。そこで男子の普段袴だった木綿の袴をはくようになったのです。当時の写真など見ますと、学内の授業風景では裁縫は正座していますが、そのほかはほとんど椅子に腰かけて授業を受けていますし、運動会や富士登山などという勇ましい姿もあります。もちろん着物に袴を着けた姿です。このように活発に活動する女学校生活に袴は欠かせない衣服となっていきます。

初の女袴は跡見女学校の紫のメリンスの袴

本邦初の私立女学校の女子教育者は跡見花蹊(あとみ・かけい)女史です。跡見学校(女学校)は明治8年の創立。跡見先生は皇族・華族の子女のために日本人女性としての高い教養と人徳を身につける教育から始まり、一般の子女にも範囲を広げた女子教育の先駆者で知られています。ここでは、木綿の袴ではなくウールのメリンスの袴が用いられました。色は紫です。この色にはエピソードがあります。
跡見先生は皇族・華族の子女を多く教育していたことから、昭憲皇太后(明治天皇の皇后)に近しかったのでしょう。女学生の袴の生地と色を決める際にお尋ねをされたそうです。すると昭憲皇太后からは「色は紫がよかろう」とのお言葉を賜ったといいます。それで、跡見女学校は袴の色は紫と決め、生地は軽くて柔らかく動きやすい利点からウールのメリンスが選ばれました。これが女学校初の女袴の誕生です。
明治18年創立の華族女学校も紫の袴をはきました。
その後続々と開校された女学校ですが、全国的に見れば格別裕福で教育熱心な家庭の子女が学ぶところで、まだまだ女学生は少なく憧れの対象でもありました。ですから憧れの女学生が男袴をはく(男装をする)ことへは多くの批判がありました。しとやかでエレガントな女性像が求められた時代ですから当然なことかもしれません。
えび茶色の袴は下田歌子(しもだ・うたこ)女史の開いた実践女学校から始まり、次々と各校で採用されてブームとなり、女学生の制服のように認識されたようです。

現在の女性の袴

現在では、女子の袴は卒業式・卒園式で多く用いられています。女学生もそうですし、先生方の袴姿もキリリとして薫り高い姿に映ります。

卒業式の先生の装い

昔から卒業生の担任の女先生は紋付のきものに袴スタイルで、卒業式の第二の主役でした。現在でも卒業式に袴スタイルで出席される先生はかなりおられて、式典に品位と華を添えているのです。
そこで、現代にふさわしい学校式典の装いを考えてみます。
●校長先生の場合:黒紋付(黒留袖も可)に紫の袴あるいは濃い海老茶の袴
色無地紋付に黒の袴
色無地紋付に濃い色の袴
●担任の先生の場合:年代に合わせた色無地紋付などに黒い袴か濃い地色の袴
※年代というのは、例えば幼稚園や小学校の先生でまだ若い先生の場合は、ご自身が大学の卒業式で着用した2尺袖という長い袖の色無地や訪問着、御所解きなどの友禅小紋に袴を合わせた姿でよろしいと思います。2尺袖というのは通常の袖丈よりも長く振袖よりも短い袖丈です。

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