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着物ブログ

眠っている反物をどうするか

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私の反物コレクション

皆さんは反物の状態で保管していることってありますか?
着物マニアってわけじゃないけど、反物のまま何十年も保管しているものがいくつかあって、なんとかしなきゃな、と時々だけど思い出すのです。白生地の反物なんて端の方が黄ばんできていてヤバイなと思っているのですが、それはそれで染めに出すとかしなきゃいけないと思うと、ますます敷居が高くなって身動きが取れなくなるのです。ちょっと大げさだけど……。

白生地

白生地は流水紋の織り柄のある、わりと立派なもので、私が成人する前から家にあったもの。たぶん着物好きだった祖母が買って、仕立てずじまいだったのだろうと思います。変色している箇所があるので、淡い色には染められないかもしれないけれど、どんな色にしようか考えるのは結構楽しい。色無地の着物に仕立てるのなら、ワードローブにない色に染めてみたいと思ってみたり、娘に譲るなら派手目の色にしようかと考えてみたり、色見本帳を眺めて想像を巡らす時間は思いのほか楽しめるものだと気がつきました。よく新人さんに対して、真っ白なキャンバスを思い通りに染め上げるという表現をするけど、まさにそんな感じ。自分色に染められる白い生地って、なんともそそられます。

藤紫の総絞り

白生地の他にあるのが藤紫の総絞り、大島、黄八丈、そして紅型。
紫の絞りなんて、なんで作ったんだろうとちょっと疑問だけれど、これは20代のころに職場の近所の絞染め工房で成り行き上、作ってもらうことになった代物で、間違いなく自分で色を指定して染めてもらったのを憶えています。

壁紙や絨毯の色を、色見本帳の小さな布片だけを見て決めると、出来上がった時ビックリするような色になって慌てることがありますよね。え? そんなヘマしない? よくあることだと思うけど(焦)。とにかく慣れないものだから、想像とかけ離れた反物に仕上がり、さらにそれを仕立てるとなると、もっと想定外の着物になりそうで……。と、若気の至りから生まれた産物が、未だに迷いの海に浮かんでいるという状況なんです。

こんなこと言うと、染め屋さんに申し訳ないですよね。若い時は渋い大人色に憧れて、紫の絞染めを嬉々として注文したのですが、ペラッペラの若造に似合うわけなかったんです。やっと今、もしかしたら似合うかもしれないという年齢に差しかかったかな、と思うので、改めて検証してみたいと考えています。いや、やっぱりもうちょっと先かなあ……。若い時の渋好みって、精一杯の背伸びですよね。

大島

大島は母が強く勧めてくれて、そのときは仕立てる予算がなかったから反物で買って、お金ができたら仕立てようと思っていたものが、結局まだ反物のままという…。若いころにはイマイチわからなかった大島の魅力ですが、この年齢になるとひしひしとその価値を感じることができます。渋い色合い、素朴なのにしなやかで優雅な手触り、控えめなのに主張する艶。何より着る人を引き立てるその風合いは、みごとと言うしかありません。これを今着ないでどうするの? 今でしょ! というわけで、これは早急に仕立てなければと思っております。これは今でこそ似合う自信がある、そう思えるのは幸せなことよね?

黄八丈

黄八丈には長年、憧れがあったんです。鮮やかな黄色、どこかエスニックな香りのする格子柄。あらゆる年代の女性に似合うと言われる黄八丈ですが、どういうわけか私には似合わなかった。色としては偏愛に近いほど大好きな黄色なのですが、若いころは黄色の洋服も似合いませんでした。しかしこれまた、今なら黄八丈が似合うのではないかとワクワクしているところなのです。

琉球紅型

残る琉球紅型は、白地に花木や鳳凰のような鳥が描かれたもので、カラフルでいて民芸品のような素朴な魅力があって、お気に入りの反物です。物語を感じさせるポエティックなテキスタイルは、エスニックな香りを伴っていて、南の国の日差しを感じます。陽気で大胆な配色の紅型ですが、一つ一つ手作業で染め上げるあたたかさがあるのです。年齢を重ねると渋い落ち着いた色を着こなすことにも憧れるけれど、こんな鮮やかな色を着こなすのも、若い時にはない醍醐味が味わえるんじゃないかな。あ、でも帯はどんなのを合わせたらいいんだろう? たくさん色を使っているから、この中の一色をメインにした帯が無難かなあ。同じ南国のもの同士は合うといいますよね。帯が紅型なら渋い色合いの紬とか絣に合わせると鮮やかなポイントになりそう。着物地じゃなくて帯にしておけばよかったかな。

こうして久しぶりに反物を引っ張り出して眺めてみると、日本は小さな国土にそれぞれの土地の染物や織物があって、各地方の風土を感じる着物ってすてきだなあと、つくづく思います。民族衣装のバリエーションとしても、これだけ豊かに発達したものは珍しいんじゃないかしら。すばらしい着物文化に乾杯! などと、にわか民俗学者みたいに思いを巡らせてみたひとときでした。

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ライターE(60代 女性)
日本文化に興味関心大。日々丁寧に暮らすことがモットー。
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