着物コーディネート6月:細野美也子|きものサロンみずもちsince1941 富山
〈六月コーディネート①〉
趣味性が強い帯を主役に据えた初夏の美術館巡りコーディネート。
着物
初夏にぴったり。迷ったときに手が出る霞暈し染めの涼やかな附下。
夏は色、地風、見た目ともに涼感がある着物の出番が増えます。
それぞれに良さはあるものの、迷ったらこれ―という、手が出る一枚ってありますよね。
こちらがまさに「これ」の一枚―というと無難な一枚?と思われる方もいるかもしれません。
無難だから選ぶのではなく「重宝」な一枚と考えるといいかもしれません。
前にもお伝えしたことがありますが、上前にぼかしが入るとフォーマルな雰囲気が出てきます。
逆にいうと、附下柄でも暈し染めがないとフォーマルダウンもしやすくなります。
こちらのさりげない暈し染めは適度なフォーマル感を持ちつつも、強い主張になっていません。
きちんと感を演出しますが堅苦しさはなく、袋帯、洒落袋帯、名古屋帯と、どのタイプの帯も受け入れる懐の深さがあります。
ここが、無難―ではなく重宝たる所以。
その合わせる帯ですが、袋帯の場合は重い雰囲気のものは避けたほうがいいでしょう。
というのは、色柄の涼やかさだけではなく、セオ・アルファ素材ならではの軽やかさがあるので、帯もバランスを考えて。
オススメの素材は紗。
紗のエアー感が着物のお洒落度を上げてくれます。
着物初心者の方が気軽に着られる附下。着物上級者の方が満足する完成度。
きものサロンみずもちセレクト附下。
帯
夏八寸名古屋帯 フォーク織 帯屋捨松 インカ組縞紋。
盛夏の前に締めたい、夏帯。超個性的な帯屋捨松の夏八寸帯。
ユニークな柄で人気の帯屋捨松。
ユニークとはいいましたが、実はそれぞれに異国の伝統柄がモチーフとなっており、その帯名を知るとまた別なおしゃれの楽しさが訪れます。
ご紹介しているのは、古代文明インカに由来した、インカ組縞紋。
また、いつにも増して独自性が出ているのが使用する糸。
夏帯では珍しいマットな地風で、それがまた美しい透け感をもって織り上がっているのです。
かなり趣味性が強い帯で、きもの上級者には絶対注目される帯。
「捨松ですよね」と聞かれ、「捨松です」と答えると納得される、唯一無二のブランドです。
コーディネート
帯次第で全方位のコーディネートが可能。
今日は美術館へ。
着物での美術館巡りは楽しいもの。
好きな企画もよし、普段見ない企画へ足を運ぶのも、また、たのし。
せっかく行くなら、コーディネートもちょっと「アート」「クリエイティブ」な雰囲気を探って見ましょう。
コツの1つをお伝えすれば、美術館コーディネートは柄を重視すると作りやすい。
着物も帯も、アートを感じさせるデザインや造形のものが、簡単でかつ、それっぽく見えます。
色で表現することも可能ですが、こちらはちょっと高度なテクニックを要します。
今回の場合は捨松の帯のユニークな柄と地風に焦点をあてて、帯を際立たせるために小物の個性はあえて控えめにしました。
着物、洋服問わず、コーディネートの楽しさはテーマを具現化できるところです。
歌舞伎が好きな方なら演目に合わせたコーディネートや、贔屓とつながるワンポイン
自己満足な世界といいながら、実は同じ世界線にいる人たちは「あ、それ」と、分かる人には分かるもの。
反対の立場で考えてもわかりますよね。
つまり、大人のコーディネートは知性や教養があって完成するということ。
その知性や教養な堅苦しいものではなく、趣味、推し活に近い「好きなもの」に近づく、身につけるということです。
着物自体が「推し」とも言えますが。
単衣・夏附下:東レシルジェリー洗える着物 111-0249
単衣・夏八寸名古屋帯:フォーク織 帯屋捨松 インカ組縞文 120-0038
夏帯上:京都和装小物 衿秀 麻 薄緑 313-0220
夏帯〆:京都和装小物 衿秀 エンジ 白・緑横段 312-0062
きものサロンみずもち:https://warakuan.shop-pro.jp/
〈六月コーディネート②〉
紫がもつエレガントなイメージを残しつつ、街に溶け込むコーディネート。
絶妙な淡藤色と柄のバランスで、上品カジュアルもきちんとコーディネート。
着物
ドレス感がある淡藤色に、西域を感じさせる唐草と鳳凰がデザインされた附下。
鳳凰というと、美々しく気品あふれる瑞鳥―吉祥の象徴でもあります。
派手やかで、柄の中心として描かれることが多いのですが、その分、着る場所を選ぶ柄でもあります。
こちらの鳳凰は唐草のなかに自然な佇まいで、むしろ可愛らしく描かれており、“着用範囲”が広い柄です。
さて、その“着用範囲”――いろいろなシーンで着られますよという説明がよくあります。
こちらでも、着まわし優秀な附下をご紹介することが多いのですが、私がそれを判断するポイントをちょっとお話します。
まず、1つ目は、色の使い方が控えめなこと。(かといって、色数が少ないとカジュアル傾向かというと、それはまた別です)
これは、きものサロンみずもちの附下の特長の一つですが、色使いが秀逸なことと関連します。
単に色数が多い少ないというだけではなく、一番大事な、配色・色使い―が優れている点です。
2つ目は、柄の一部に突出した個性が出すぎていないこと。
これが先にお話した、鳳凰の柄にあたります。
鳳凰は、それ自体が主役級でバーンとメインに描かれることが多い柄です。
そうすると絵羽柄がより強調されて格とつながりやすい傾向になります。
この附下の柄は鳳凰、唐花が全体に同調されており、いい意味で個性が強すぎない点が“着用範囲”の広さにつながります。
3つ目は暈し染めが使われていないところです。
暈し染めは、実は隠れた表現力があり、全体の印象を左右する場合があります。
着るシーンの想定をしたときに、これらの要素を見て、街の風景にも馴染むとか、改まった席に向いているとかを判断します。
もちろん、これは私個人の基準でそれぞれに別な基準もあるかもしれませんが、そういうなかの一つの基準として参考にしていただくといいかと思います。
一応、誤解のないようにお伝えしておくと、着まわしができる着物=改まったシーンで着られないということではなありません。
それ以外にもコーディネートの変化で着られるという、嬉しいプラスアルファがある附下ということです。
ぜひ、いろいろなシーンで楽しんでください。
着物初心者の方が気軽に着られる附下。着物上級者の方が満足する完成度。
きものサロンみずもちセレクト附下。
帯
単衣・夏名古屋帯 夏の白のスマートさが垢抜け感を演出。
絽目が涼やか。
加飾を控えたシンプルさに高度なお洒落心を感じ取ります。
いままでにも白の帯は紹介してきましたが、特に夏は、白。
白の帯をぜひ一筋、お持ちいただきたいと思います。
夏の垢抜け感で大事なポイントに涼感が挙げられます。
どんなに良いものでも、高価なものでも暑苦しさを感じる部分があると一気に野暮ったくなります。
しかし、そんな多少の暑苦しさを相殺してくれるのが、白の帯。
しかも夏の白は、どんな地色の着物でも相性良し。
着物の柄の密度が高い、ちょっと重たい着物でも全体に涼感をもたらしてくれます。
コーディネート
パーティでも、上質なスマートカジュアルとしても、着まわしOK。
今回のコーディネートをみていただくと、やさしいエレガントな雰囲気が漂うと思います。
それは紫という色がもつ特性で、学術的な色彩研究において、紫のイメージは「高貴 エレガント ゴージャス 大人っぽい セクシー 神秘的」等々で認識されています。
これは古今東西同じイメージとされています。
ただ使い方によってはセクシーが下品にもなるとも言われることも。
紹介している淡藤色は青みのある紫。
紫色の強い印象が薄色になることで、いい意味で中和されてとても上品で、本来、紫が持たない知的なイメージにさえつながっています。
附下の柄もクセがなく、白のシンプルな帯を合わせることで上質な小紋感覚で着ていただけると思います。
帯上に強めの桔梗色を合わせてアクセントをつけることで、正統派+お洒落な気遣いを演出しています。
もちろん、帯を替えると改まった席にもOK。
単衣・夏附下:東レシルジェリー洗える着物 111-0247
単衣・夏名古屋帯:119-0002
夏帯上:京都和装小物 衿秀 麻 紫 313-0228
夏帯〆:江戸組紐 五嶋紐 レース 312-0370
きものサロンみずもち:https://warakuan.shop-pro.jp/
〈六月コーディネート③〉
“エッジが利いた正統派”という新しい視点でのコーディネート。
着物
ありそうでない青緑の地色を生かした、人と被らない附下。
かつて、きものでグリーン系は売れないと言われた時代がありました。
しかし、ここ7〜8年、ターコイズグリーンやピーコックグリーンがきもので大流行し、昨今ではグリーン系もよく見るようになりました。
とはいえ、ご紹介しているこの色は珍しいかもしれません。
伝統色でいうと、深藍色(ふかきあいいろ)になります。
緑という字が入っていなくて、藍?と思うかもしれません。
「延喜式」(905年 平安前期)という本のなかでは、藍は「暗い青緑色」として書かれており、いまの藍とは別な色でした。
つまり、現代の色に変換すると青緑、深緑とよばれる色といえそうです。
深い色ですが、青みの強い緑なので夏でも暑苦しさは感じません。ありそうでないグリーン系の附下。
丸文に収められた伝統的な麻の葉や花柄。
柄だけでみると控えめで古典的な雰囲気ですが、地色の効果で古典模様が逆にエッジの利いたデザインの着物として映ります。
現代的なアイテムに、あえて和の要素を取り込んだような、いい意味での面白さ、ユニークな味わいがあります。
カジュアルテイスト強めな附下なので、遊びがある小物を取り入れるなど、趣味的なコーディネートが楽しめる一枚になりそうです。
着物初心者の方が気軽に着られる附下。着物上級者の方が満足する完成度。
きものサロンみずもちセレクト附下。
帯
単衣・夏名古屋帯 博多織 松装織物 繧繝霞。
帯偏差値が高い、オールシーズン使える博多帯。
松装織物の紋八寸名古屋帯。全通なので扱いがラク。
そしてこれが、“ただの全通”ではないところが特筆すべき特長。
一見、無地に見えますが、糸にぼかしを施しているので織り上がりも自然なぼかしが現れ、立体感がある仕上がりになっています。
そして何より、この八寸帯の良いところは、オールシーズン使えるところ。
僅かな透け感と織り味が夏っぽくもあり、かと言って紗のようにすぐに視認できるほど強い透け感はありません。
博多織は平織りが通年使い仕様で重宝されていますが、この繧繝霞も同様。
昨今は季節を限定しにくいアイテムが増えている傾向があります。
ユーザーにとっては嬉しい傾向と言えますね。
コーディネート
附下の個性的な地色をメインにした、見た目温度低めの夏コーデ。
着物の項でも取り上げた、附下の地色から展開したワンカラーコーディネート。
夏は色を控えた組み合わせが見た目の温度を下げてくれます。
色が個性的とは言え、セミフォーマルで通用する附下でありながら、カジュアルに寄せてまとめてみました。
ポイントは、幾何学模様の、ややクセのあるカジュアル味が強い帯上。
ワンカラーコーディネートの全体が締まり、かつワンカラーの単調さに変化をつけてくれます。
無地感の帯だと、帯〆にも表情をつけたくなりますが、ここはむしろ帯上の効果を最大限に活かして変化を付けるためにも、あえて帯〆は主張のない細めを使用。やや高度なテクニックを用いた上級コーディネートです。
単衣・夏附下:東レシルジェリー洗える着物 111-0250
単衣・夏八寸名古屋帯:博多織 松装織物 繧繝霞 120-0034
夏帯上:京都和装小物 衿秀 313-0094
夏帯〆:江戸組紐 五嶋紐
きものサロンみずもち:https://warakuan.shop-pro.jp/
〈六月コーディネート④〉
フォーマル未満カジュアル以上の、見た目の涼感マックスコーディネート。
着物
アイシーなミントブルーで気温マイナス2度。
涼感&爽快感、そして「小確幸」をもたらす洗える夏の附下。
少しでも涼しく過ごしたい夏。
着物を着たとしても、いえ、着物だからこそ、より体感温度も留意したいところです。
正直、Tシャツ1枚、タンクトップ1枚より着物のほうが涼しいとはいいません。
そこは同じ土俵で比較するものではないと考えています。
それでも着物を着たい。着物が好き。
着物で出かけたい-そんな私たちにとっての、「気持ちが涼やかになるコーディネート」として考えていきたいと思います。
もちろん、その前に体調と気温をみて無理は禁物、が大前提です。
涼感がある着物姿は周囲の見た目温度を下げてくれます。
交差点の信号待ちで、「涼しそうですね〜」と、声をかけられたことがある人は多いと思います。
着ているこちらの実感としては、相手が感じるほどの涼しさは……さすがにありませんよね。
が、しかし!
その言葉は、ほぼ称賛、褒め言葉と捉えていいと思うのですが、
人はポジティブな言葉をかけられると、気持ちだけでなく脳内も同様にポジティブになり、一瞬とは言え、かけられた言葉の魔法にかかってしまうといいます。
つまり、脳も“私、涼しい……”と、思い込んでしまうということ。
「小確幸(しょうかっこう)」という言葉をご存知でしょうか。
ノーベル文学賞候補に何度も挙がっている世界的な人気小説家、村上春樹が提唱した造語です。
日常生活のなかで「小さいが確実な幸せ」を大事にしていこう、という考え方を意味する言葉です。
行列のできるお店で大好きなスイーツを買えた日、
電車の乗り継ぎがベストタイミングだったとき、
手をやいたあとの子供たちの寝顔等々。
豪華で特別なことだけが幸せなのではなく、日常にある心がほっこり和む小さな幸せ。
大好きな着物を着られる日常はもちろん、
帯結びが短時間でピシッと決まったときとか、小物を初下ししたときとか、褒め言葉をもらうというのも、「小確幸」。
しかも、着たあとの手入れを専門店に出すことなく、気軽に自分で“洗える”というのも、1つの「小確幸」ですね。
木綿や麻だけでなく、きちんと感のある着物を気軽に楽しめるというのは、大人のお洒落の幅が広がります。
着物初心者の方が気軽に着られる附下。着物上級者の方が満足する完成度。
きものサロンみずもちセレクト附下。
帯
夏染九寸名古屋帯 十日町友禅 秀美 葵唐花。
ロマンティックな絽。秀美 葵唐花の夏染帯。
着物、帯も含めて素材の豊富さでは夏が突出しています。
その代表とも言える夏の素材が絽。
とはいえ、残念ながら着物で正絹の絽を着る人は減っています。
洗えることを条件の1つに挙げることが多い現代であれば、致し方ないところはありますが、帯なら絽を存分に楽しむことができます。
白地に涼やかな青の、葵唐花の型染め。
堅苦しさのない染め帯ですが、絽という素材の上品さが附下に合わせてもバランスがよく、むしろ着物の着まわしを助ける優秀アイテムと言えます。
コーディネート
フォーマル感を消してきちんと感をのこした大人のコーディネート。
今月ご紹介しているコーディネートは、「ドレスダウンしつつ、きちんと感を残したスマートコーディネート」がテーマの1つ。
つまり、セミフォーマルで着用可能な附下をそのままのフォーマルテイストでコーディネートするのではなく、もっと日常に落とし込めるスタイルを意識して帯を選んでいます。
だから、八寸名古屋帯や九寸名古屋帯も合わせています。
しかし、そうはいっても附下のスマートさや大人のきちんと感は残したい-ということで、今回は絽の染め帯を合わせて附下をドレスダウンしました。
また、これまでにもお伝えしていますが、ドレスダウン、もしくはカジュアル寄りにしたいときのコツは色を際立たせること。
わかりやすく言うと、優しい色より鮮やかな色、濃いめの色、強めな存在感のある色、または柄にカジュアルな雰囲気があることなど。
チョイスによっては白以外の半衿を使うのもありです。
帯留めや帯飾りも然り。
今回は、絽の染め帯と、衿秀の帯上の水色がほどよいドレスダウンの役割となっています。
“何か”がなくても、着たいときに着ることができるコーディネートです。
単衣・夏附下:東レシルジェリー洗える着物 111-0248
夏染九寸名古屋帯:十日町友禅 秀美 葵唐花 白 120-0008
帯上:京都和装小物 衿秀 313-0089
帯〆:江戸組紐 五嶋紐 312-0211
きものサロンみずもち:https://warakuan.shop-pro.jp/
〈コーディネーター〉
コーディネート 文:細野美也子様(月刊アレコレ)
https://www.arecole.com/
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〈会社案内〉
水持産業株式会社
https://www.warakuan.jp/
〒933-0804富山県高岡市問屋町20番地
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