着物コーディネート11月:細野美也子|きものサロンみずもちsince1941 富山
〈十一月コーディネート①〉
古典的でいながらゴージャスでエレガンスが感じられる、和のドレスチックなコーディネート。
着物
地色と秋草柄の色みのバランスがベストマッチ。本格的でいながら可愛さがある附下。
波に秋草―古典的な柄ですが仰々しさはなく、むしろ自然の愛らしさを感じる柄です。あまり着目されないかもしれませんが、この柄に差した僅かな黄と水色、これが秀逸です。
これ以上差すと可愛すぎてこの附下のグレード感が落ちてしまいかねない。
それでいて控えすぎると秋草特有の情緒が失われると思われます。
この分量がいいのは、地色の灰紫とのマッチング。
地色は彩度をおさえた中間色だから秋草の色はこれくらいでちょうどいいのです。
この配色、そしてバランス感は素晴らしいと思います。
さて11月は口切り。
お茶の世界ではお正月ですが、秋の大寄せのお席に入るのであれば、まさにぴったりのチョイスになるのではないでしょうか。
控えめな華やかさと、お道具や設えの邪魔をしない上品な色目。
お茶席に限らず、派手さはないのに、相手に対して装いに気を使っていることが伝わる着物です。
ありそうでない、重宝な一枚になるのではないでしょうか。
もちろん、控えめだけが信条なわけではなく、帯次第で華やかさがグンと増します。
優秀な秘書のようにも、CEOのパートナーのようにも、相手(帯)に合わせたクラス感を出せる着物といえます。
ところで昨今、単衣の時期が長くなり、今までなら袷で仕立てていたものも単衣仕立てにするという人は、ほんとうに増えています。
しかし、これはぜひ袷で、八掛を楽しんでほしい着物です。
単衣ではフワッと軽すぎて、この附下の良さが伝わりにくい気がします。
いい意味での袷がもつ重さがこの附下を輝かせると感じています。
共色の八掛けも上品でステキですし、菊の色とリンクさせて黄色みのあるクリーム色も若々しくていいですね。
着物初心者の方が気軽に着られる附下。着物の上級者の方が満足する完成度。
きものサロンみずもちセレクト附下。
帯
袋帯 西陣織 大西織物 四季花円文。
職人のプライドが創る、染めと見紛うエレガントな逸品。西陣織・大西織物の袋帯。
織りの袋帯でこのデザインを起こすのは決断がいると思います。
というのは、いまや袋帯は礼装一択の位置づけ。
“礼装に合わせる格の高い織りの帯”というのが、一般的な認識です。
全体の柄の中で中心になる柄があるならわかりますが、あきらかに名古屋帯同様のお太鼓柄。
どういうシーンで締めてほしいと考えたのかはわかりませんが、無難な袋帯でないことは確か。
だからこそ、輝きがあります。
しゃれ袋帯として締めてもいいですが、ここまでの仕上がりだと中途半端な小紋ではなくきちんと感がある附下以上がオススメ。
訪問着はもちろんですが、色留袖で合わせても決して見劣りしないと思います。
創った職人のプライドと自信が感じられる一筋です。
コーディネート
正統派、セミフォーマルでありながら、上質なセンスとお洒落心があるコーディネート。
附下は帯次第で格の上げ下げ、カジュアルダウンしてお洒落を楽しむことができる一枚。
こちらに織りでありながらポイントのお太鼓柄という凝った帯を合わせると、着物の雰囲気もちゃんとそこにふさわしい表情になります。
趣味性の高い帯ではありますが、四季百花の様相を呈した繊細で密な模様は華やか。
高い技術を用いた織りの上質さは、格も持ち備えています。
正統派で、フォーマル、セミフォーマルとしても通用する組み合わせですが、
セオリー通りの小物合わせではなく、帯の個性に合わせて帯締めに五島紐の赤を、帯上に暈しを入れました。
和のクイーンのようなコーディネートです。
附下:東レシルック洗える着物 106-0082
袋帯:メーカー:大西織物 四季花円文 116-0694
帯上:京都和装小物 和光 313-0010
帯〆:メーカー:五嶋紐 312-0154
きものサロンみずもち:https://warakuan.shop-pro.jp/
〈十一月コーディネート②〉
作り手の顔が見える大人のお洒落は、あえて主役級を決めずに全体のバランスを計算した上級者コーディネート。
着物
シックなグレーを基調とした幾何学調の柄の洗える紋意匠附下は、どんな帯もウェルカム。
きものの柄は季節を取り入れるおしゃれという観点からも、四季の草花や気候を取り入れた自然のモチーフが多く、それはそれで楽しみではありますが、季節限定という縛りもあります。
こちらの附下の地色・グレーは、モダンで、やや無機質な印象をもつ無彩色の1つ。
いい意味で柄に季節感や意味を持たせない良さがあります。
幾何学調の柄は頭を悩ませる四季のコーディネートのハードルが低くなり、そしてより着まわしが楽になっていると思います。
この附下でしたら、その春先、秋、どちらでも着られる懐の深さがあり、春に着る場合と秋冬に着る場合、それぞれ小物でこだわりが表現できます。
スタイルとしては最近人気の大人カワイイ雰囲気より、カッコいい大人のテイストのほうがまとまりやすく、失敗しません。
また、帯次第で多彩な着こなしができますが、甘めのコーディネートより断然クールなコーディネートでまとめるのがオススメです。
甘めNGとはいうものの、グレーとピンクの相性はよいので、クールスタイルが苦手な方でも、帯にくすみ系のピンク、退紅色などを合わせるとイングランド風上品マダムの配色で優しい仕上がりになります。
彩度が高く、淡いピンクはNG。
ここを押さえれば、あとは季節で小物を変えて楽しめます。
着物初心者の方が気軽に着られる附下。
着物上級者の方が満足する完成度。
きものサロンみずもちセレクト附下。
帯
袋帯 西陣織 紫紘 色竹献上。
極上の帯は多くを語らない―削ぎ落とした究極の表現は紫紘織ならでは
画像だけでみるとやや素っ気なさを感じるかもしれません。
しかし、実際に見たときは格が違うオーラがあります。
ここでまず織元の紫紘についてちょっと触れたいと思います。
紫紘は紫紘織ブランドで商品作りをしている西陣のメーカーです。
高級帯地を製造しており、糸の選別、柄となる図案の発想の豊かさとその完成度、何よりもその緻密な柄を織り上げる技術は比類ないものがあります。
きもの離れの昨今、ともすれば市場に迎合するもの作りに転換するメーカーも少なくないところ、
創業者・山口伊太郎の意思を繋いで常に紫紘織のプライドをもったもの作りに励んでいます。
今年のNHK大河ドラマは「光る君へ」――紫式部の「源氏物語」がベースになっていますが、
これを題材として描かれた「源氏物語絵巻」(国宝)を、「源氏物語錦織絵巻」と称して全て織りで再現すべく制作を始めたのが1970年。
2001年には全4巻を完成させ、1セットはフランス国立ギメ東洋美術館に収蔵されています。
多くの研究者の力も借りて、実際の絵巻では色褪せている部分も考証して元の色彩を追求して作られた素晴らしい芸術品です。
105歳で亡くなった伊太郎のつくり手としての精神が脈打つ紫紘織は、手にしたなら宝となること間違いない逸品です。
色竹献上――削ぎ落とした美は着る人を引き上げてくれます。
コーディネート
極上の脇役に支えられた、着る人を主役に押し上げる組み合わせ――バランスが美しいコーディネート。
帯が最上級の上質さがあるので、あまり語りを多くせず、そして附下げと調和するよう、甘さやカワイさとは距離を置いた、ほんとうの大人のコーディネートとして仕上げました。
一見、渋く、華やかさに欠けるように見えますが、本物がもつその魅力は十分伝わる存在感があります。
着物だけ、帯だけ、色だけに目が行くのではなく、全体としてのハッとする上質さが伝わり、そこから着ている人のパーソナリティに目が行くような導線となっています。
なので、小物もあえて色をおさえました。
1つだけ追記すると、こういうコーディネートではヘアメイクは手を抜かないことが鉄則。
着物や帯の先にある、着る人の顔の明るさ、華やかさがあって完成される美しいバランスです。
附下:東レシルック洗える着物 紋意匠附下 106-0094
袋帯:袋帯 メーカー:紫絋 色竹献上 116-0686
帯上:メーカー:衿秀 313-0050
帯〆:メーカー:五嶋紐 312-0184
きものサロンみずもち:https://warakuan.shop-pro.jp/
〈十一月コーディネート③〉
〈十一月コーディネート④〉
〈コーディネーター〉
コーディネート 文:細野美也子様(月刊アレコレ)
https://www.arecole.com/
Instagram:@arecole.miyakohosono
〈会社案内〉
水持産業株式会社
https://www.warakuan.jp/
〒933-0804富山県高岡市問屋町20番地
TEL:0120-25-3306
SNSではお役立ち情報・最新情報を更新中ですˎˊ˗
ぜひフォローして投稿をチェックしてください🔍
確かな品揃え、着物購入をお考えの方にオススメ🌷
〘きものサロンみずもち〙
@kimono_mizumochi